日本一古いおでん屋さん

 皆様お元気ですか?年が明けたと思ったら、もう三月。二月は会議でしたが、伊香保温泉へ行って参りました。久しぶりの温泉は、とても気持ちよくて、ちょっとだけのんびりしました。

 去年の12月号では住吉や道頓堀界隈、法善寺の夫婦善哉など、大阪に行った事を書かせていただきましたが、今回は大阪に行ったら絶対に行きたかったお店です。

「あー、大阪のおでん、いつかまた食べたい」専門学校生時代に、友達の家で大阪出身のお母さんが作ってくれた、鯨やスジを入れたおでんの美味しさが今でも忘れられずにいます。

 だいぶ前に、大阪の特集番組で日本一古いおでん屋(関東煮)た古梅(たこうめ)さんと言う、おでんの老舗が紹介されました。大阪の日本橋にある本店さんの江戸時代か明治時代の雰囲気の立派な建物が映り、それがとても記憶にあって「絶対に行こう!」と決めておりました。

 大阪は初めてということもあり、東京西川の本社より大阪支店に異動となった社員、森川さんを誘います。この日は待ち合わせの都合で、梅田にある北店さんへ。

 染め抜きの暖簾をくぐると、大きなコの字のカウンターは、すでに多くのお客さんがお酒を楽しんでおり、その繁盛ぶりが伺えます。

 私は練り物が大好きなので、特におでんは大好物です。汁を濁らさない東京のおでんと違い、関東煮は熱々です。熱々のおでんが好きなので、家でもぐらぐらと煮立ててしまいます。

「関西なのに関東煮・・・?」関西ではおでんを関東煮と呼ぶのを知っていましたが、奈良朝より文化は西から東へ伝わったのに、「逆輸入?」と不思議に思っていました。

 それは、広東(中国の地方)の人たちが食べていた煮込み料理を広東煮と言い、それを縮めて「かんとだき」になったとか、醤油製造が盛んだった関東で蛸や烏賊等を醤油で煮た物を「かんとうふ煮」と呼んだ等、諸説あるそうです。

 た古梅さんの歴史は古く、黒船来航109年前の弘化元年(174年前)に、大阪は日本橋に初代の岡田梅次郎さんが、たこの甘露煮と関東煮のお店を開業されました。

 当時から今も変わらないコの字型カウンターで、店主がカウンター越しにお客へ四方八方に手を伸ばしてお酒や料理を出す姿が、蛸に似ているのでカウンターを「たこ」と呼び、その「たこ」と「梅次郎さん」の梅をとり、「た古梅」と屋号にされたそうです。また、関東煮と一緒に上質のお酒をお燗し提供するので「上燗屋」とも呼ばれていたそうです。

「森川さん、何食べようか?」とメニューを見ていると、初めてと判ったのか店員さんが気さくに色々教えてくれます。まずはたこの甘露煮を。「これは美味い!」甘露煮は長時間煮るそうで、初めて食べるその味はとても柔らかく、出汁の甘味が染み込んで上燗によく合います。

 鯨の料理も有名で、サラシ鯨や赤身なども注文。初めて食べましたが、新鮮で少しずつつまむのに最高でした。 

 いよいよお待ちかねの関東煮の盛り合わせ。厚揚げやねり物などが盛られ、出汁は濃厚で熱々。「あー、(友達の)お母さん作ってくれたのも、こう言う味だったんだな」と学生時代にご馳走になった関東煮を懐かしく思いました。

 中でも珍しいのが、さえずりと言う鯨の舌で、初代の梅次郎さんが初めて関東煮に使ったそうです。実はさえずりは、た古梅さんが名付けたそうです。

 柔らかいその身は、ずっと噛んでいても味が薄れず、いつまでも噛めますが、自然と小さくなります。脂の甘味がじわっと染み出し、とても美味しかったです。すじも牛すじではなく鯨のすじで、さっぱりとして噛むとじわっと、美味しい味が染み出します。

 関東煮に上燗が進みます。その錫の盃が手にフィットして、とても飲みやすい。

 また、いつまでも冷めずに温かいので、店員さんに「この盃、持ちやすくて馴染みますね」と言うと、「それは40年位経ってます。古いのはもっと古いですよ」

「40年ですか、驚き!森川さん産まれてないよね?俺もまだ4、5歳の頃だ・・・」と、その盃は「上燗コップ」と呼ぶそうで指が当たる部分が程好く磨り減り、とても掴みやすくて飲みやすいのです。


 この上燗コップも三代目のご主人が開発され、頭を上に上げなくてもそのままコップを傾けるだけで飲めます。

「これ欲しいな、どこで売ってますか?」と聞くと、何とた古梅さんで購入出来るとの事。裏には「た古梅」の刻印が押してあると言うので、迷わず自分のお土産にしました。

 埼玉から来た事を店員さんに言うと色々話しかけてくれて、初めてなのに何度も伺っているようで、とても居心地が良く、時間が経つのを忘れてしまいました。

 池波正太郎さんなど、多くの作家や文化人にも愛され、小説やエッセイに登場するほどだそうで、現在も色々な本などに取り上げられています。私もラジオ番組のNACK5(ナックファイブ)で、小林克也さんが「大阪にたこ梅と言う、とても美味しいおでん屋さんがあり・・・」と言うのを聞いた事があります。た古梅さんに行ったばかりなので、とても嬉しくなりました。

 日本一古い伝統があるお店ですが、新しい香りがするお店。店員さんの細やかな心配りや店内を伺うと、東京西川の先代の会長が申していた「伝統ばかりに囚われていると、衰退する。伝統とは革新である」そんな言葉を思い出しました。

 「また大阪来るね。ここで飲もうね」と、森川さんとの話も弾み楽しい大阪の夜は更けていきました。

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