三方よしの聖地へ

新年あけましておめでとうございます

 旧年中はお世話になりました。本年も宜しくお願い申し上げます。加納屋創業71 年を迎え,

一新につとめて参りますので、宜しくお願い申し上げます。

 京都から琵琶湖線で近江八幡まで約三五分。昨年、創業450年を迎えた西川の本家へ行って参りました。

 近江八幡は豊臣 秀吉が築いた八幡城の城下町として栄え、秀吉の甥、秀次が治めたところです。今でもクラシカルな趣がある町並みで、八幡堀など江戸時代の船での運搬風景など、時代劇などの撮影にもよく使われています。

 古い家が立ち並び、その中でも一段と大きい構えの西川邸があります。「こんな古い建物なんだ、すごい!」と、時代を感じます。商家らしくあまり大きくない門をくぐり玄関を上がると、「おー、料亭に来たみたい」と、江戸時代に建てられた趣のある広座敷に通され、ここで西川文化財団の方からお話を聞きます。

 「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしを旨とする近江商人の発祥は、鎌倉時代にまで遡ると言われ、織田 信長の頃、特に繁栄し、デパートの高島屋さんや伊藤忠商事さん、西川など現存する有名な会社が数多くあります。

 西川の発祥は1556年に初代仁右衛門が十九歳で創業します。西川は近江商人の中でも、八幡商人と言われ、主に蚊帳や麻布等を扱い、信州や関東、京都大阪、北海道で活躍していました。

 二代目甚五郎が江戸に向かって箱根越えをしていた折、疲れた体を休めようと木陰に身を横たえ、気がつくと緑色の蔦葛が一面に広がる野原にいた。その爽やかな気分はまるで、仙境にいるようだったそうです。それは夢だったのですが、甚五郎は「これだ!」と、それまで麻生地のまま織られた地味な蚊帳を、夢のイメージに再現することを思い立ち、「寝る時も目覚めた時も、清涼感ある緑に囲まれたシーンを目にすれば、蚊帳の中にいる人の気持ちを和ませ、爽快な気持ちにさせるのではないか?」と考えました。こうして、近江蚊帳は萌黄色に染められ、紅色の縁取りを施されて登場し、江戸で大ヒットします。


 近江商人は倹約を旨としていますが、高い物であっても本当に良い物ならば長く使う考えが、この家づくりに現れています。質の良い材料を使いながらも華美ではなく、落ち着いた雰囲気が漂います。何やら財団の方が、軽々と床間の床框を持ち上げます。

 するとその下からもう一つ床框が現れ、「おっ、何だ?」と興味津々で見ていると、

「これは床框のカバーで、普段は床の間が傷つかないようにこれで覆い、御祝儀や法事があると、これを取って本物を見せるのです」と説明されました。近江商人の物を大切にする「始末してきばる」と言う考え方が活きており、この床間のカバーもその一つだと、感動いたしました。

  明治に入って増築した部屋もあります。何やら中庭に、「梨本宮守正王殿下御あと」と書かれた石碑が建っています。中庭ばかりでなく、表の大きな庭園にも。「宮様が関係あるのかな?」と不思議に思い聞くと、「これまでに五人の皇族がお泊りになられました」それは、首都が東京に移ると、儀式等の為に東京から京都に行かれる皇族が、西川本家を宿といたします。菊の御紋と桐を透かした欄間や、上から刀を差しても天井が貫通して襲われない為に、無節の分厚い桧の板で天井を作るなど、宮様専用のお部屋を造り、御滞在されると、その記念に建てられた石碑だそうです。


 次は二階へ。雰囲気がカラッと変わり、洋館の佇まいです。広く開放された洋間にはステンドグラスや洋風にあしらわれた火鉢などの調度が配され、中でも大きなソファーと同柄のカーテンがその豪華さを際立たせています。

「このソファーには座らないでくださいね。ソファーとカーテンは同じ絹の布なのですが、何しろ百年前のもので、裂けてしまいます。」と言われ、「もしかして修復不可能なのですか?」と尋ねると、「はい、織る技術が今はないので、とても貴重なのです」と教えてくださいました。

 洋室から美しい庭が一望でき、その先に見える山々までも一体に見え、全てこの屋敷の敷地に見えます。

  廊下の襖を開けるとガラッと和室へと変わります。ここに西川が繁栄したきっかけをつくった、萌黄の蚊帳が・・・。

 やはり室内の材木は無節の桧を使用し、中国の聖人を描いた襖絵に蚊帳の赤い縁が美しく映ります。

「一般に公開しないのですか?」と聞くと「はい、今でもお盆とお正月は甚五郎会長が東京から戻り、先祖のご供養をされるので、公開いたしません。」

「えっ、この屋敷今でも現役なんだ!」と、驚くのと同時に、今でも大切に使われている事に感動いたしました。


 一度、訪れてみたいと思っていた、西川本家。西川は日本の企業の中でも、飛鳥時代に日本で初めて創業された、建築業の金剛組さんから数えて、13番目に古い会社だそうで、今の社長で十五代目となります。

 代々「西川甚五郎」を名乗っていくのですが「こんなに続くのも、三方よし、始末してきばる、陰徳善事の考え方がその基盤を作ったのだな」と、世界にも誇れる近江商人の教え。私ももっと勉強をして、皆様にお返ししなければと思い、近江を後にいたしました。


(※このニューズレター第83号は平成29年1月に発行いたしました。)


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