日本のリッチモンドへ2

 皆様お元気ですか?急に真夏のような暑さになったり、平温にもどったりしますが、体調管理などご注意くださいね。今年も今月で半年が経ちました。『あっ』という間で早いですね。

 前回は王子散策で、名主の滝と王子稲荷。王子の名の由来を書かせていただきましたが、もうひとつ外国人にも愛された名所を巡って参りました。

 音無川親水公園から明治通りを渡り、見事に桜が咲く飛鳥山へ。「こんな沢山の桜、間近で見るの久しぶり!」と、思えばあっという間に葉桜になっていて、『花をみる為にどこかへ行く』と言うのは何年ぶりでしょうか。

 チンチン電車が明治通りを車と一緒に通り抜けると、昭和情緒たっぷりでいつまでも残してほしい風景です。「そうだ、せっかくだからモノレールに乗ろう!」と、飛鳥山の麓に向かいます。ですが長蛇の列。誰かの『一時間待ちだって!』という声が聞こえたので

諦めて階段を登ることに。

「こんなに桜を間近で見るのも久振り」と、桜の合間を上がると手にとれる程で、花の合間に見えるJRの線路群の眺めはまた、とても壮観です。結局、階段を登って良かったです。

  小高い山頂に上がると見事な桜。平日の日中ですが、木の間には花見客で賑わいます。ぐるっと一周すると、中程に大きな【飛鳥山碑】と言う石碑があります。


 解説を読むと、何やら徳川 吉宗公による事績を顕彰した石碑だそうで、浮世絵にも描かれ、飛鳥山のシンボル的な存在なのですね。

 TVでは【暴れん坊将軍】として有名な方ですが、飛鳥山は約三百年前に、その八代将軍・徳川吉宗公が、王子権現(現・王子神社)に寄進した山だそうで、一般市民の行楽地とするために、桜を植え名所にいたしました。特に現在の東京都北区の荒川沿いの辺は将軍家の御鷹場に定められ、厳しい規制がかけられていたそうで、その領民の息抜きや娯楽にも飛鳥山が大切な場所だったようです。

 当時、徳川家菩提所の寛永寺がある事で、上野の花見は歌舞音曲と飲酒は禁止だったそうで、王子はそれが許され、江戸の街から多くの遊山客が訪れたほど、王子の花見が流行ったそうです。

  紀州徳川家出身の吉宗公は故郷(和歌山県)の熊野大社に由緒をもつ王子権現がある事をとても喜び、お宮と山の間を流れる石神井川を、故郷の音無川になぞり【音無川】と名付たそうです。

「将軍様もきっと故郷に帰りたかったのかな・・・」。幕政改革で幕府を立直した吉宗公、忙しい公務はきっと辛かったでしょう。故郷を懐かしみ江戸の近くに紀州をつくったのかもしれませんね。


 吉宗公により一大観光地となった王子には、音無川を庭に見立てた料亭が立ち並び、春は桜、夏は滝遊び、紅葉に雪見と一年を通して賑わい、王子稲荷の帰り等にも多くのお客が立ち寄ったそうです。中でも扇屋さんは玉子焼が有名で、現在でも販売されています。【王子の狐】と言う、人間が狐を騙す落語にも扇屋さんと玉子焼が登場し、昔から人気店なのが伺えます。江戸時代の料亭番付にも登場したそうですよ。

 明治六年、上野恩賜公園とともに日本初の公園に指定されると、多くの外国人も訪れますが、中でも英国の植物研究家のロバートフォーチュンと言う方は飛鳥山を中心とした王子を愛したそうです。

 荒川や隅田川の大きな流れがあり、自然の中に生活があり、将軍様が市民に奨励した飛鳥山の花見ですが、ヨーロッパではとても贅沢だったピクニックよりも、飛鳥山ではその百年も前に行われていて、とても驚かれたそうです。

 外国の田園都市には、遊山の施設としてホテルがあるそうですが、ここには音無川に海老屋、扇屋があり、【計画的に建設させた田園都市】が整備されていて、この辺りが『日本のリッチモンド』と称される事になったそうです。

 ロバートフォーチュンがこの田園都市計画を持ち帰り、自国に造ったそうですが、逆に王子を愛した渋沢栄一翁が海外の田園都市を取り入れ、田園調布や国立を造ったというのですから驚きです。

「あっ、玉子焼買って帰ろう」。と音無川沿いの扇屋さんの売店にもどります。 いつもは夜、食事に行く前に扇屋さんに立ち寄ると、いつもお客が並んでいます。

「ラッキー!」と今日は昼間だからか私一人でした。扇屋さんの玉子焼は三七〇年前からの伝統の焼き方で焼かれ、甘めでしっとりと柔らかく、とても美味しい玉子焼で、丁寧な仕事ぶりがうかがわれます。『いつかは、釜焼を食べたいなと、バースディケーキの様に巨大な玉子焼を食べてみたいです。

「将軍様も、明治の人も日本はすごいんだな!」もちろん現代のような便利さは進んでいませんが、市民の為に大きな一大観光地を造ったり、その街が外国のお手本になったり。その壮大さに触れた一日でした。

 またいつか、渋沢資料館をはじめ、飛鳥山3つの博物館の事を書かせていただきます。これからは麓の紫陽花が美しい季節です。しっとりと紫陽花のお花見もまた、良いですね。

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